20000713 DDT(高木三四郎vs大仁田厚)

開場1時間前くらいに一度会場の前まで行ってみた。

既に2、30人のファンの列と、10数人の関係者がソワソワと歩き回っていた。まー、こういう事態なんで浮き足立つのも仕方ないよね。そして、ただの客の私は、時間が持たないので、一旦会場を離れる。今日はON AIR EASTもWESTも盛況の様子。人がごったがえすホテル街。開場までにATOMの前に並んだのは100人近かったんじゃないだろうか。

19時をちょっと過ぎて入場。エレベーターで5Fまで上がるので若干時間がかかる。エレベーターは、奇怪な電子音で観客を迎え入れた。キュィーン、ダァン。最終的には行列の前半分には並んでいたものの、入場したらかなりの人。狭い会場ゆえに仕方ないとはいえ、有刺鉄線やって大丈夫なのか?って感じのスシ詰め感。リングと観客の間が50センチくらい、その50センチの中をカメラマンが歩き回る。さすがに報道陣も多い。さすがは大仁田って感じさせます。でも、結構良い位置をキープ、一列目に体を斜めにして入れた。試合開始までに3回、この対戦の経緯をまとめたVTRを観る。3回目はソロソロ始まるか?ってことで、みんな手拍子だった。

その後、三四郎、大仁田双方のプロモが流れる。そして、控え室での一言。三四郎も役者だけど大仁田はスゲェな、大河ドラマに出ただけはあるね。出来上がってる感が会場を支配する。入場して30分以上が経ち、欲求も高まっている。これは失敗しようがない空気ができた。みんな焦れている。これは高野代表の教えか。

そして、とうとう三四郎の入場。初めての会場だったので、何処から入場するのかと思っていたら、観客を掻き分けての入場、これもまた良い演出になっている。

三四郎、いつものように黒タイツひとつで入場。有刺鉄線を際立たせる為の作法か?リング上、コーナーにこそ昇らないがいつものように四方にアピール。ファイヤー。しかし、いつも通りにみえないのは、場の雰囲気のせいか?それとも三四郎の緊張か?でも、この状況悪くない。スタイルがいつもの通りってところがまた良かった。これで、爆破の時のようにジーンズにTシャツだったら、ちょっと戸惑ったかもしれない。黒のショートタイツでこそ高木三四郎ってことだ。いつもの三四郎で大仁田に向かう。大仁田はいつものようにワイルドシングとノボリを従えて入場、こちらも正装。ジーンズにTシャツ、ニーパットにリングシューズ。大仁田にはコレが正装だ。リング上で大仁田心憎い動きを見せる。Tシャツを脱いで上半身裸になった。これには会場どよめいた。旧FMW時代から、上半身を隠したコスチュームでやってきた大仁田が、この有刺鉄線のリングで上半身裸なのだ、それも脱がされたんじゃなく、自ら。このいろんな意味にもとれる行動で、俄然試合にも興味が。

実のところ、直接の因縁のない選手との最後のシングルマッチだと思ってたんです。っていうこで、単なる歴史の証人的な気持ちで足を運んでいたんですね。実際、試合見るまではWARになんで行かなかったんだろうとか思ってたし。そして、いつもの三四郎と特別な大仁田の試合、序盤はグラウンドで淡々と進んで行った。腕を取り首を取り、取られては返し、また狙うといった感じ。ある意味じっくり、10分近くはそういった攻防。瞬間瞬間に有刺鉄線際の攻防が絡む。そんな大仁田には余裕すら感じさせられた。小さい会場を意識した試合。グラウンドの動きにも余裕があり、小さい会場ならではの口撃にも余裕が。「一回逃したら、もう極まらんぞ」「俺は全日本プロレスから2X年こんなことをやってるんじゃ」必死に動いている様子の三四郎にも会場にも届く声を投げかける。

「こっちだって、5年間どインディーでやってるんだ」三四郎も返すが、大仁田の表情は変えられなかった。試合に動きが出たのはこの後、最初に有刺鉄線の餌食になったのは三四郎。押し込まれてうめく。ここからは、いつものレスリング、大仁田にはDDO三四郎にはスタナー、得意な技を打ち合う。場外にもつれて有刺鉄線の間から落ちる。しかし、如何せん狭すぎる会場、場外戦は無理。大仁田、リング上に机をあげてセット、三四郎机パイルを食らう。三四郎三四郎スタナー2000、ダブルアーム式の三四郎スタナーを決める。しかし、大仁田は最後まで余裕を失わなかった。サンダーファイヤー3連発でピン。

残念ながら、現時点での役者の違いも感じた。しかし、近年の大仁田のシングルでは、トップクラスの試合じゃないだろうか、素晴らしいプロレスだったと思う。ギミックに頼らず、体もさらしてレスリングをする大仁田なんか観れると思ってなかったよ。私がプロレスを観はじめた時代の、NWAJrのチャンピオンだった大仁田のことを思い出したりもした。あの頃は上半身を隠してなかったしね。

そして、この2人の試合後はどうしたって、こうなるでしょ?大仁田劇場だ。この三四郎戦は長州戦へ向けての試合ではない。インディーの継承に長州は関係ない。そして、三四郎の肩には邪道皮ジャンが。しかし、三四郎はそれを返す。こんどは自分の力で取りに行きます。この光景を見詰める一人の男、真鍋だ。リングに上がる真鍋、大仁田に疑問を投げかける。長州戦を目の前にして、何故高木三四郎なのか?そこに何の意味があるのか?大仁田は意味なんかない、これがインディーだと答える。そう、インディーに意味なんか無くていいんじゃないか?私もそう思う。

いや、インディーに意味が無いんじゃなくて、ひとつひとつに意味を求める必要がないんじゃないかってことで。今、これをやらなきゃ意味がない、その意味を長州戦と絡めて考えてもさらに意味が無いってことじゃないかと思う。インディーの意味の求めかたと、メジャーの意味の求めかたっていうのは違うんじゃないかと思う。

真鍋が求めたこの試合の意味、それは存在しない。しかし、大仁田と三四郎がこの試合に求めた意味というのは存在している。それは真鍋にゃわからない。そーいうことなんじゃないですかね。ただ無意味な試合がキャパ150と極小さい会場とはいえ、満員にすることは無いだろう。そう、我々観客にも意味があったんだ。

その意味に共感できたから、観に行ったってことだろう。歴史の証人となる為に。私は長州と大仁田の試合を観に行かない。その試合に大仁田、長州、新日本、真鍋が考える意味に、共感できないからだ。まーそーいうことです。真鍋、長州戦の意味はなんだ?真鍋と大仁田のやり取りに三四郎も割ってはいる。三四郎真鍋に問い掛ける、真鍋答えようとした瞬間に、んなこたぁ、どーだっていいんだよ!と遮る。

三四郎集会の内容はもう憶えていない。そして、いつのまにか大仁田はリングを降りていた。最後に三四郎は、これは大仁田劇場でもなんでも無い、三四郎集会だと叫んでリングから降りた。三四郎の腕には有刺鉄線がえぐった傷がついていた。邪道の証、男樹の証、有刺鉄線の証、インディーの証。こじつければ、その傷にはあらゆる意味がつけられる。でも、それはこれからにかかっているだろう。引退するといわれている大仁田が、プロレスから手を引けるかどうかもこれからにかかっている。引退するなんて思ってないけどさ。

三四郎のカリスマへの道はまだこれからだったんだな。まだ先に楽しみがあるのもいいんじゃないの。まだまだ終わらないインディーのお話。

 

20000713
DDT
NON-FIX SP 高木三四郎vs大仁田厚
渋谷 club ATOM